町田商店は1992年に誕生した、いわゆる「資本系」の家系ラーメン店です。「家系ラーメン」という言葉を聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのが町田商店や壱角家などのチェーン店かもしれません。しかし近年、これらの資本系の店を「本当の家系ラーメンではない」と主張する意見が増えてきました。一体なぜなのでしょうか。この記事では、町田商店を例に、家系ラーメンの定義と特徴、資本系ラーメン店をめぐる論争について詳しく解説していきます。
1.町田商店は家系ラーメンの特徴(豚骨醤油スープ、太麺、定番トッピング)を備えたチェーン店
2.伝統店が各店で時間をかけてスープを仕込むのに対し、町田商店は工場生産の濃縮スープを使用
3.製法の違いから「本物の家系ではない」との批判があるが、定義上は家系ラーメンの要件を満たす
4.伝統的な個人店とチェーン店は、それぞれの形で家系ラーメン文化を支えている
町田商店は家系ラーメンではないのか!?
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家系ラーメンの定義と特徴
家系ラーメンとは、1974年に横浜市で誕生した醤油豚骨ラーメンのスタイルを指します。発祥は吉村家で、豚骨と鶏ガラ、野菜などを長時間煮込んで作る白濁したスープ、平打ちの太麺、海苔や焼きのりのトッピングなどが特徴です。
Wikipediaでは、家系ラーメンを以下のように定義しています。
豚骨や鶏ガラから取った出汁に醤油のタレを混ぜた豚骨醤油ベースのスープ、太い中華麺と鶏油に、ホウレンソウ、チャーシュー、海苔のトッピングで構成される。麺の硬さや油の量、味の濃さを好みに応じて調整してもらえるのが一般的である。
この定義に照らせば、町田商店のラーメンは紛れもない家系ラーメンだと言えます。豚骨ベースのコクのあるスープ、食べ応えのある太麺、背脂やホウレンソウ、海苔のトッピングなど、家系の王道とも言える特徴を備えているからです。
町田商店のメニューと味の特徴
町田商店の定番メニューは「ラーメン」です。
メニュー | 価格 | 特徴 |
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ラーメン | ¥850 | 町田商店の定番メニュー。濃厚豚骨醤油スープと自家製中太麺のシンプルながらも奥深い味わい。 |
味玉ラーメン | ¥970 | ラーメンに味付け半熟卵をトッピング。濃厚なスープと半熟卵の絶妙なハーモニー。 |
MAXラーメン | ¥1,100 | ボリューム満点の大盛りラーメン。麺の量も具材の量も通常の1.5倍でガッツリ食べたい人におすすめ。 |
チャーシューメン | ¥1,100 | 柔らかくジューシーなチャーシューがたっぷりのった贅沢な一杯。 |
野菜ラーメン | ¥1,000 | ほうれん草、キャベツ、もやしなどの野菜がたっぷり入ったヘルシーな一杯。 |
ネギラーメン | ¥1,030 | 爽やかな風味の青ネギがたっぷり入ったさっぱりとした味わいのラーメン。 |
ネギチャーシューメン | ¥1,280 | ネギラーメンにチャーシューをトッピングした贅沢バージョン。 |
どのメニューも、家系ラーメンの特徴である浮き脂やホウレンソウ、海苔がトッピングされています。味の特徴はスープの濃厚さにあり、豚骨の旨味と醤油ダレのコクが強く感じられるのが町田商店流。麺の量も多めで、大盛りにすると1kgを超えるボリューム感も魅力の1つと言えます。
町田商店が家系ラーメンと呼ばれる理由
以上のような特徴から、町田商店のラーメンは味・見た目・ボリューム感のいずれをとっても、家系ラーメンの特徴を明確に打ち出していると言えるでしょう。実際、多くの来店客は町田商店を「横浜を代表する家系ラーメンの店」と認識しているはずです。それだけ町田商店の味が、家系ラーメンのイメージに合致しているということの表れだと言えます。
町田商店の特徴 | 家系ラーメンの特徴 |
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豚骨ベースの白濁スープ | 豚骨や鶏ガラを長時間煮込んだスープ |
背脂醤油の濃厚な味わい | 豚骨スープに醤油ダレを合わせたコクのある味 |
加水率の高い太めのストレート麺 | モチモチとした食感の太麺 |
ホウレンソウ、のり、チャーシューのトッピング | 定番の家系ラーメンのトッピング |
見た目も味もまさに家系ラーメンそのものと言っていい町田商店ですが、なぜ「町田商店は家系じゃない」などと批判されることがあるのでしょうか。
町田商店が家系ラーメンではないと言われる理由を紹介
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家系ラーメンの起源と伝統的な製法
横浜家系ラーメンの元祖とされる吉村家は、1974年に横浜市磯子区で創業しました。豚骨と鶏ガラ、水、醤油ダレのみを使って作る白丸スープを完成させたのが吉村家の初代店主・吉村実さんです。
この吉村家の製法が、家系ラーメンの伝統的な作り方として長らく守られてきました。具体的には、以下のような工程を経てスープを作ります。
- 豚骨、鶏ガラ、野菜などを大量の水で長時間煮込む。
- 煮込んだスープをザルなどで濾してアクを取り除く。
- 濾したスープをさらに煮込んで濃縮させる。
- 濃縮したスープに醤油ダレを加え、最終的な味を調整する。
この工程はすべて各店舗で行われており、レシピやスープの味加減は店主の裁量に任されていました。修行を積んだ店主だからこそ、微妙な味の調整ができるというわけです。
資本系ラーメンチェーンの台頭と影響
しかし、1990年代後半から状況は変わり始めます。いわゆる「資本系」の家系ラーメン店が登場し、チェーン展開を始めたのです。代表格が本日のテーマである町田商店や、同じく有名な壱角家などです。
これらの資本系ラーメン店は、店舗を増やすにつれて製法を大きく変更しました。各店舗での仕込みをやめ、本部工場でスープを一括生産するようになったのです。この方式だと、どの店舗でも均一の味が提供でき、スープ作りの手間も大幅に省けます。
町田商店のスープ製法と個人店との違い
町田商店もセントラルキッチン方式を採用しています。本部工場で濃縮スープを作り、各店舗に配送。店舗ではそれを薄めて使用しているわけですね。
これが従来の家系ラーメンの個人店との最大の違いと言えます。じっくり時間をかけて店内で仕込んだスープと、工場生産の濃縮スープでは、味の奥行きや香味に大きな開きがあるというわけです。
さらに、家系ラーメンの味はスープの濃度によって変わってきます。仮に同じ濃縮スープを使っていても、水で薄める配分によって味の濃淡は大きく変わるということです。つまり、町田商店のスープは本部の意向を反映しているだけで、それぞれの店舗に大きな裁量はないのが実情なのです。
味の違いと顧客の期待のギャップ
こうした製法の違いは、「町田商店は本物の家系じゃない」という批判にもつながっています。「セントラルキッチン方式のスープでは、手作りの家系の味を再現できない」というのがその主な理由です。
たとえば濃厚さや風味の点では、町田商店のスープは吉村家などの伝統的な家系ラーメンに及ばないという声があります。豚骨のコクや鶏油の香り、醤油ダレの利いた味など、細部のニュアンスが物足りないというわけです。
また、サービス面の違いも批判の的になることがあります。家系ラーメンの魅力は、注文を受けてから茹でる麺のシコシコ感や、無料で注文できる大盛りにもあります。しかし町田商店では麺の茹で時間が比較的短く、大盛りは有料というケースが多いのです。
結局のところ、町田商店は家系ラーメン!
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定義上は間違いなく家系ラーメン
味や製法をめぐる論争はさておき、町田商店のラーメンが家系の定義に当てはまるのは間違いありません。豚骨ベースのスープ、醤油ダレ、背脂、海苔など、家系ラーメンの特徴を明確に備えているからです。
多くの人が 町田商店のラーメンに「家系らしさ」を感じているのも事実。見た目も味も、家系の特徴を強く打ち出しているからこそ、圧倒的な支持を集めているのです。
製法の違いはあるが、味の本質は家系
たしかに、セントラルキッチン方式のスープは手作りの味とは言い難い面があります。繊細な味わいのニュアンスという点では、伝統的な製法の方が優れているのは確かです。
しかし、だからと言って町田商店の味が家系ラーメンの本質を外しているわけではありません。豚骨と醤油ダレのコクのあるスープ、食べ応えのある太麺、海苔や背脂のトッピングなど、家系ラーメンならではの特徴を確実に受け継いでいます。製法は異なれど、味の根幹をなす要素は共通しているのです。
町田商店は家系ラーメンではないのかについて総括
町田商店は紛れもない家系ラーメンの店です。製法をめぐる論争はさておき、家系の味を気軽に楽しめる有り難い存在と言えるでしょう。一方で、伝統の製法を守り続ける個人店の良さもまた格別。そのどちらもが、「家系ラーメン」という文化を豊かにしている、かけがえのない存在なのだと思います。